腹話術
無事に火葬も終わり
いつもあいつがいた場所には白い骨壷
そしてエサと水を供える。
仕事から戻るとつい、いつもの癖で
あいつの名前を呼び
声なき返事を待つ。
今朝、夜勤を終えて帰宅。
いつものように「ただいま、仁」
そう言うつもりだった。
ドアを開けて、ただいま……
???
ん?
カスカスカス……
声が出ない。
喉は痛くないし、深呼吸してを肺を空気で満たしても
声帯が反応しない感じである。
大声で叫ぶと、ただ噎せるだけである。
小声で低い声を出すと、ヒソヒソ話レベルの
微かに聞き取れるか?くらいの声が出た。
疲れているのか?と思い
とりあえず睡眠を取るも
3時間後に目覚めてもやはり声は出ない。
やる気のない私は特にあせることもなく
ただ、現実を受け入れた
今は声が出ないんだと……
溜まりきったメールに返信をしつつ
明日をどう乗り切るか考える。
子供にもメールで声が出ないことを伝えると
大丈夫?と次男が近づいてくる。
こいつは今風邪をひいている。
もしや、風邪菌を拾ってしまったか?!
と考えていると
やってきたのは我が家の伝説クリエイター3男。
「声が出ないん?」と聞くためあ、うなづいて答える。
「じゃあさ……」
「???」
「腹話術で話せばいいじゃん!」
……( ゚∀ ゚)ハッ!その手があったか!!
なぁんてなるわけがない。
腹話術が簡単に出来れば、いっこく堂も一般市民だ。
とはいえ、練習さえすれば少しは話せる人もいると聞く。
こやつは、もしや腹話術ができるのか?
【腹話術ってどうやるの?】とメールを送ると
それを見て
「お腹に顔と口を描いて……」と説明を始めた。
うん、それは腹話術ではなく
腹踊りだ( ̄▽ ̄;)
自宅で腹踊りする母を見たら
笑えるどころか空気が凍るだろうよ……
残念だ……
非常に残念だ……三男よ。
君の伝説がまた増えて
母の頭痛の種はすくすくと成長しているよ🐣🐥🐤🐔